1000の仮説と答え合わせ

日々の頭に浮かんだ疑問を、1000個を目標に「調べて」「仮説だてて」「できれば答え合わせしていく」

ビジネス視点で読んだ荒木飛呂彦の奇妙な冒険のための地図

ジョースター家とその宿敵ディオの因縁を壮大なスケールで描く大河ドラマ、『ジョジョの奇妙な冒険』。

75年生まれのジャンプ育ちだったけれど、小学校で購読をやめたためボクにとって、
ジョジョといえば耽美で奇妙なあの強烈な絵のタッチと、クソ憎いディオの嫌な奴イメージしかなく……。
中学以降は、好きになっちゃう女の子が、“なぜだか必ずジョジョが好き♡”という以外に接点はありませんでした。

あ、グッチとコラボしたビジュアルは、最高だと思います。

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さて、そんなジョジョと約20年ぶりの邂逅となったのが、作者である荒木飛呂彦先生が書いた書籍『荒木飛呂彦の漫画術』。「この本の内容を3分でわかるように整理・解説してみて欲しいな!」と、手渡していただいたのをきっかけにこの記事を書いています。

 

この本を超完結にまとめると

タイトルどおり、漫画作品作りの考え方と方法論が書かれたストレートな指南書です。
驚いたのは、内容が本質的かつ合理的である点。荒木先生は、変態的な才能と思考を持つ人だと勝手なイメージを持っていたので意外な驚きでした。

兵法の技術や心構えをまとめた宮本武蔵の『五輪書』や、人間関係の法則を書いたD.カーネギー『人を動かす』にも通じる普遍的なメソッドが散りばめられています。

マーケティング、ブランディング領域でのクリエイティブに視点と解釈を転換して、“どうしたら共感を得られるのか、どうしたら愛され続けるのか”と、本書に書かれてる内容を捉えたのですが、いろいろな発見がありました。

 

一貫するメッセージは、ヒットを分析する習慣を持ち、王道を抑えよ。

「ヒット作には理由がある。徹底的に分析する習慣を持ち、道標とすべき地図を持て」。


本書で貫かれる荒木先生の一貫したメッセージがこれ。地図とは手順や作法の王道のことを指します。
地図を持ち、明確なビジョン・目的・目標にブレずに向かうことこそが、売れる漫画作家になるための方法だと説いています。

このヒット作を徹底的に分析し別の視点で捉え直す訓練は、クリエイティブ業界で言われる「デコンストラクション」と同じです。

優れたマーケター、クリエイターに必要不可欠な習慣だと再認識しました。


漫画における地図とは「キャラクター」「ストーリー」「世界観」「テーマ」で構成されるといい、これを荒木先生は「漫画の基本四大構造」と表現しています。

重要な順序は①キャラクター、②ストーリー、③世界観、④テーマ。

本書の章立てもこの4つに分かれており、それぞれ学びになった要点を紹介していきます。

 

もっとも重要なキャラクターは、身上調査書でイメージを鮮明化する

漫画において最も重要なのはキャラクター。キャラクターがしっかりしていれば、キャラクターが勝手に動き出しストーリーまでも浮かんでくるのだと説きます。

キャラクターづくりで一番大切なのは、性格ではなくて動機。良い動機とは、読者の自然な倫理観にフィットする動機で、読者は正しいものへの共感力が強く、勇気こそ最も共感される動機だそうです。

キャラクターを設定する手法として荒木先生が編み出したツールとして紹介されているのが、身上調査書というもの。

動機や性格はもちろん、出身地や学歴、得意技、苦手なモノやコトまで、60以上にもおよぶ項目からなるシートで、これを詳細に埋めることでキャラクターの曖昧さをなくすのだそうです。

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これはマーケティングでいうところのペルソナに近いもの。ストーリーとしての戦略を描く上で、イメージが生き生きとリアリティをもって動き出すかどうかを左右するペルソナを、どこまで詳細鮮明に描くべきかのヒントになりました。

ちなみにジョジョでは特技、得意技、必殺技から項目を埋めることから、キャラクターを鮮明化するやり方をするケースが多いとのこと。ペルソナで言う特技は……、なんなんでしょうね(笑)。

 

王道のストーリーはプラスが連続する物語

わかりやすいストーリー構成の鉄則は、起承転結である! と、ベーシックすぎる(苦笑)手法が紹介されていますが、ジョジョのように斬新、複雑に感じるストーリーも基本の軸を起承転結に置き、それを巧妙にズラしていくことで、強烈なオリジナリティを創りだしているという点が学びでした。

王道をズラすだけでも十分に新規性や独自性は発揮できるんですよ!

また、「これは本質だなあ」と強く共感したのは、読者の心を掴む王道のストーリーとはプラスが連続するストーリーであるという理論です。

漫画ではトーナメント方式の戦いがわかりやすい例で、敵に勝利する度に成長(プラス)し、優勝というゴールに近づいてく(プラス)というストーリーです。
※野球漫画の王道が、トータルでの勝率を競うプロ野球漫画ではなく高校野球なのは、この理論ですね

ユーザーの心を掴むにはプラスの連続であれ、という考え方は、ユーザーコミュニケーションにおけるゲーミフィケーションの設定に通じるところがあります。ユーザーを巻き込んだマーケティング戦略・戦術を設計する際には、そのストーリーとインタラクションがプラスの連続になるような仕組み、仕掛けをいれるべしと、心に刻みました。

 

世界観に重要なのはリアリティ。詳細に描くには自ら体験せよ。

世界観とは≒背景描写であり、読者がその世界に浸りたいと思わせられれば勝ち。そのためには詳細に描き、リアリティを追求せよと説きます。

世界観をリアルに描くうえでの心がけとして、ネットリサーチだけではなく、体験することの重要性を強調しています。

これには深く同意するとともに、戒めとして常に自分に、さらには周囲に問いかけ続けないといけないなあと…。時間的な制約を理由にしたり、知っているつもりになって小手先の作業にしてしまうことって“あるある”ですからね。

ちなみに寿司職人の場合に設定・描写する世界観の例はこんな感じで書かれていました。
荒木先生の世界観の詳細のレベルがわかる例です。

【鮨職人】
・朝の仕入れ
・店じまいの後片付け
・寿司を握るときの手の動き
・食中毒にならないための工夫
・季節ごとのネタetc.

 

テーマとは作者の哲学が反映されるもの。他人のテーマを生きてはいけない

「キャラクター」、「ストーリー」、「世界観」を統括しつなぐ要素がテーマであり、作品を描く中でゆらいではいけないもの。

テーマは作者の哲学が反映されるものであり、哲学が絵の描き方にもつながるのだと説きます。
やってはいけないことは、作者自身の人生に沿わない他人のテーマを生きること。

わたしはここまで読んで、荒木先生のいう「漫画の基本四大構造」を、イコール「ブランドの基本四大構造」として捉えて、もう一度本書を読みながら書き留めたメモを読み返しました。

 

奇妙な冒険も王道からはじまる

斬新、ユニーク、唯一無二な『ジョジョの奇妙な冒険』が、変態的な天賦の思考から生まれたのではなく合理的な王道を軸に、明確な意図を持った巧妙なズラしで、出来上がっているという事実を知れたのが本書の一番の収穫でした。

 

奇妙な冒険も王道から。

王道をおさえるのはヒットを分析する日々の習慣から。

 

巷のディスラプト:ストライダーが破壊したプロセスとプロダクト

3~4歳の幼児たちが自転車を颯爽と乗り回す。
そこには、かつて幼児の自転車には必ず付けられていたはずの補助輪はない。ひと昔前には、ありえなかった光景が、日本のあちこちの公園で繰り広げられている。そして、この事実を子どもを持つ親以外はほとんど知らない。。。

 

ストライダー」というブランドに代表されるペダルとブレーキのない
ランニングバイクという新しいカテゴリーの自転車によるイノベーションインパクトだ。

自転車を乗りこなすまでのプロセスとして当たり前だった

「三輪車」→「補助輪付き自転車」→「自転車」の3ステップを

「ランニングバイク」→いきなり「自転車」にショートカットし

「三輪車」と「補助輪付き自転車」というカテゴリーを破壊した。


STRIDER JAPAN|ありがとう!ストライダー世界累計販売100万台突破!

うちには小学1年生の息子と年中の娘がいるが、2人とも2歳からストライダーに乗り、3歳になってすぐに補助輪なしの自転車を乗りこなすようになった。2人とも三輪車には乗っていない。ちなみにボクが補助輪なしの自転車に乗れたのは、たしか小学2年生のころで、周りの20代以上に聞いても、だれひとり3歳から乗れていたという人はいなかった。

ストライダーは、2007年にアメリカで発売され、現在は世界93ヶ国・地域で事業を展開。2015年2月に、世界累計販売台数が100万台を突破、そのうち約30万台は日本で売られている。3割近くが日本のマーケットで売られていることが興味深い。

DIYな米国の開発者と、コンテンツ化した日本の開拓者

一体、誰がこのイノベーティブなプロダクトを創りだし、誰がその価値を広めたのか。

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生みの親は、ライアン・マクファーランドという米国の片田舎のDIYパパ。
元々バイクのディーラーの両親の元で、バイクに親しんでいた彼は、長男が2歳になった2007年に補助輪付きの自転車を買い与えたが、息子はペダルもこげず、重すぎてまったく乗ることができなかった。そこで、市販の子供用自転車を自宅のガレージで改造して、徹底的に軽く息子が扱いようにした。商品化などまったく頭になく、ただただ息子のために試行錯誤してストライダーの原型をデザインしたそうだ。

原点は「そもそもペダルなんていらないんじゃないか?」という、
これまで誰もが疑うことがなかったアタリマエを大胆に覆すアイデア

さらにたったひとりのユーザーを喜ばせたい一心で、
すぐさまガレージでプロトタイプを作ってみるというDIY精神。

ストライダーの誕生には、イノベーティブなプロダクト誕生の伝説に
不可欠な2つの要素があったってわけだ。

 

では、つぎの謎。誰がその価値を広めたのか。
なぜこのストライダーは爆発的にヒットし、その1/3は日本のマーケットで売れているのか。

張本人は、ちょっと意外な人物で、映画キャラクターやアメコミキャラクターのフィギュア・グッズ専門店としてコアなマニアの間で有名な豆魚雷の社長、岡島和嗣さんなのだ!

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豆魚雷 ※2016年1月に創業20周年を迎えた。
https://www.mamegyorai.co.jp/net/default.aspx

岡島さんは、米国で見つけたストライダーを2歳の息子に買い与え、みるみる乗りこなすようになる姿に感動して、米ストライダースポーツインターナショナルへメールで直談判して正規代理店に。
知名度も販路もまったくない状態に悪戦苦闘しながらも、その価値をサイトで詳しく情報発信し続けた。

ブレイクスルーは、ストライダーをプロダクトではなくコンテンツに転換したマーケティング活動だった。
バイクやプラモデル好きなパパの趣味・趣向に着目し、米国本社に要請してハンドルやホイールなどの部品の色を増やしてもらい19万通りのカスタマイズができるようにした。
また、“世界最年少の二輪レース”として、2010年に2歳から出場できる「ストライダーカップ」を日本で初めて開催した。
この大会は以来年間4戦開催され、現在は世界各地でも開催される日本初世界規模のコンテンツとなっている。

このストライダーの成功物語は、いかにイノベーティブな価値を持つプロダクトであっても優れたマーケティング(粘り強いマーケティングともいえる)が不可欠だということを教えてくれる好例だ。ピーター・ティールが『ZERO to ONE』でマーケティングを無視するなと口すっぱく語っていたことも思い出す。

豆魚雷の岡島さんは、20年前にまだフィギュアというカルチャーがなかった時代に、日本にフィギュアカルチャーを根付かせた人物のひとりだったため、フィールドは違えど、新たなカルチャーを根付かせるための感が人一倍冴えたのかもしれない。

今後も巷のディスラプトの舞台裏をウォッチしていこう。

 

キッズ用ランニングバイク STRIDER(ストライダー)グリーン/ ST-J4

キッズ用ランニングバイク STRIDER(ストライダー)グリーン/ ST-J4

 

 

 

ネットもソーシャルもなかった約20年前に、イマドキの生活者を正確に描いた驚愕の予言書

ネットもソーシャルもなかった今から約20年前に、現在の生活者の「価値観」「ライフスタイル」「“キブン”」を見事に言い当てていた予言の書があった。。。

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商品、サービス、メディアetc.なんらかのコミュニケーション戦略や戦術をプランニングする際に、ぜったいに避けては通れないし、最重要なのが、ターゲットである生活者をイメージし、そのインサイトを洞察するステップだ。

…なんだが。デジタルで生活者のあらゆるデータが容易に取得できるようになってからというもの、生活者の態度変容やアクションを促すためのありとあらゆるテクニカルな手法やTIPSが、毎日のようにマーケティング畑のコンサルタントやイマドキのグロースハッカーらから発信され続け(ゲップ。。。)、データというファクトベースで導出された手法だからね…という強い洗脳力に惹かれて、“手法先行あたま”でプランニングにじゃんじゃん活用しちゃっているマーケッターやプランナーはかなり多い。

ボク自身、耳障りとウケがいいことを理由にそんな手法やTIPSに関するワードを連呼してしまったりもするが、なんでその手法やTIPSが効果的なのかまでを完璧に説明できないし、心の底では、もっと本質的な人間の行動心理や価値観をベースに考えるべきだろ?という強い想いが滾っていた。

そんな想いを抱えながら、「あ! そういえば」と、ふと自宅の本棚にあった一冊を10年以上ぶりに読み返して、目が覚めた。開眼した。

ネットもソーシャルもなかった時代、1995年に書かれているにもかかわらず、現在の生活者の「価値観」「ライフスタイル」「“キブン”」を見事に言い当て、ノマド、コワーキング、クラウドソーシング、クラウドファウンディング、学びサービス、ゆるい趣味コミュニティ、キュレーションメディア、戦略PR、コンテンツマーケティングetc.、
今、社会に受け入れられている新しい仕組み・サービス・手法やライフスタイルのほとんどすべてを、なぜ誕生して、なぜ社会に広く受け入れられるのかまで説明できてしまう、まさしく予言の書だったのだ。

 

予言の書とは、オタキング岡田斗司夫氏の作家デビュー作『ぼくたちの洗脳社会』。

ぼくたちの洗脳社会 (朝日文庫)

未来学者 アルビン・トフラー『第三の波(The Third Wave.)』、堺屋太一『知価革命』を下敷きに、テクノロジーの進化ではなく、価値観の変化(パラダイムシフト)という視点から、“近未来は、こんな社会になりますよ。”と鮮明に描いた一冊だ。

『ぼくたちの洗脳社会』は、無料で公開されているため、ここでは要点だけを紹介する。ぜひ以下のURLより全文読んでみて欲しい。
http://otaking-ex.jp/special/book001_001.html

 

パラダイムシフト

▼これからの時代は、「モノ不足・情報余り」の時代

・物欲や金に惑わされるのをみっともないと感じる。モノに関心を示さないのを立派と感じる
・「たくさんあるモノをパーッと使う美意識」は「情報をたくさん使うこと」をカッコイイと感じさせることになります
・精神世界を大切にし、科学よりも抽象的芸術を愛する

 ▼誰もが洗脳者になれる社会「自由洗脳競争社会」

・「洗脳行為が自由になり、個人に開放されつつある社会」
・人々の不安や不満をつかみ、最も効率よくそれを解消する方法を提案することによって、
 多くの尊敬と賞賛を得られるのが、自由洗脳競争社会。得られる利益は経済利潤ではなく、洗脳利潤、つまりイメージである。これが「洗脳社会」「自由洗脳競争」の定義
自由経済社会においては、何を買うかが最大の関心事でした。これと同様、自由洗脳社会では、豊富にある価値観や世界観、
 つまりイメージから何を選ぶかというのが最大関心事になります
・未来企業を左右するのは「イメージキャピタル」

▼洗脳社会での消費行動

・消費行動は、どんどんサポーター的要素が強くなっていく

・つまり「モノを買う」「お金を払う」という行為が、自分の欲しいものを手に入れるためや、自分の望むサービスを受けるためではなく、自分が賛同する企業やグループ・個人を応援するためになされることが多くなる
・そういうサポーター的お金の使い方がカッコイイと考えられるようになり、逆に、自分のもの欲しさにお金を使ったり、どこをサポートしていいか分からなかったりすることはカッコワルイことになります。また、いくつもの団体をサポートしている、そのトータルコーディネートもバランスが取れていなければなりません。 

 

パラダイムシフト、重要な3つの視点

①情報余り

・情報化社会の本質とは、「世界中の小さな事件の客観情報まで入ってくるのではなく、大きな事件の解釈や感想が無限にあふれ出す社会」
「高度情報化社会とは、情報の数が増えるのではなく、一つの情報に対する解釈が無限に流通する社会である」
・つまり価値判断や世界観が、事実よりもずっとたくさん流通されていくようになる
・豊富な情報ネットで莫大な量の価値観・世界観が流通する世界 

②唯一無二の自分

・「自分の気持ちが一番大事、という価値観」
・自分の感覚・趣味性を最大の価値とする
・価値観を共有する者同士がグループを形成する
・個人の中で複数の価値観をコーディネートする
・科学的・合理的解決法に何も期待しないからこそ、心情的な解決法を採る 

 ③一生、お勉強

・「唯一無二の自分」と「一生、お勉強」が合体して、アマチュア活動やカルチャースクール活動はどんどん盛んになるでしょう
・彼らは「おもしろそう」「楽しそう」という自分の気持ちを大切に、勉強する分野を選びます
・彼らの目的は「自分を豊かにする」ことです
・彼らは自分の気持ちを大切にするために作ったり売ったりします。つまり、自分の好きという気持ちを再確認するために描いたり作ったりし、
 その気持ちに同調してくれる人の存在を確認するために売るのです。お金を儲けるためでも、有名になるためでもありません
 こういったアマチュア活動は今後ますます盛んになるでしょう

どうっすか? 

『ぼくたちの洗脳社会』の内容は、生活者のインサイトを洞察するうえでの重要な土台(ベース)になるし、調査段階で実施するソーシャルリスニングやグループインタビュー/デプスインタビューにおける有効な仮説にもなるはずだ。
似たような生活者の本質論文脈では、最近こんな書籍も発刊されて、話題になっている。

メディア野郎・田端信太郎氏と“Mr.戦略PR”本田哲也氏の共著『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』

広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。

脱・手法ファーストの時だ。

 

神対応の都市伝説は実話。任天堂「エンディングまで泣くんじゃない」

今回は、仮説と、その答え合わせではなく、都市伝説への回答をしよう。

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顧客第一のように見せかけながら、其の実、実態が異なる企業は多い。

スクウェアエニックスが「ドラクエモンスターズ」のガチャ問題へのクレームでとった対応は、メッキが剥がれたわかりやすい例だろう。

とあるビジネス誌記者が、実名をあげながら、イケイケの人気企業の醜悪な顧客対応を嘆いたことも思い出す。

※今やその企業は…

さて

3年連続で営業赤字を計上、据え置き型ゲーム機Wii U」の販売失敗を認め、不振にあえぐ任天堂。かつて世界中から羨望の眼差しを受けた企業が、苦境に立つ姿に思いを巡らせながら、青春の記憶が蘇った。

 

「エンディングまで泣くんじゃない」

そんな稀代の名コピーとともに1989年、任天堂が売りだしたゲームソフト「MOTHER」を、当時田舎の中学生だったボクは、発売日に購入し、熱中した。

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このソフトのプロデューサーは、コピーライターの糸井重里氏。ドラクエ、FF、ウィザードリィなど硬派なRPGが全盛のなか、牧歌的、叙情的な作風で際立っていた。

毎日数時間プレイをして徐々にストーリーを進行させるも、局面で何度も謎が解けずつまづいた。

その都度、困ったボクがとった行動は、任天堂に電話して泣きつくという、今思えば赤面してしまうような幼稚な行動だった。

その数、計数十回。土日には1日に4~5回電話したこともあった。

こんな、ハッキリ言ってウザイ電話攻勢に対し、電話口の任天堂のお兄さんがとった行動は…。

 

「どうしました?」「難しかったかな?」

優しい口調で、課題の解決法を事細かく丁寧に教えてくれるというものだった。

一刻も早く涙のエンディングに近づきたいボクにしてみれば、後光が差すほどの神対応。鮮烈な記憶として今も心に刻まれているし、任天堂ブランドへの愛は深い揺るぎないものになった。

 

任天堂神対応については、NAVERまとめにも都市伝説的に紹介されているが、

【神サポート】任天堂神対応 まとめhttp://matome.naver.jp/odai/2127485123888916301

 実際に体験したボクは、断言できる。

任天堂神対応は実話です。」

 

今も街に出れば、NINTENDO DSに夢中になっている小学生だらけだ。

DS現ユーザー~ファミコン世代のアラフォーまでの全世代は、任天堂ブランドを媒介にした楽しいコミュニケーション体験を心に宿している。

 新規に打ち出したヘルスケア事業、キャラクター事業は、目先のビジネスに思えてならない。

ドラッカーの名言「われわれの顧客は何を価値と考えるか」。

 

復活のシナリオに重要なのは、多くの日本人が持つ任天堂のブランド体験という資産の活用と、任天堂の中興の祖であった山内溥氏が大切にした“こどもの心”の深層にある、潜在的ニーズの発掘だと仮説立てる。

任天堂、「エンディングまで泣くんじゃない」。

サイゼリヤが図らずも開発したもの

財力的にも味の嗜好的にも庶民派なボクが、外食でちょくちょく利用するのが「サイゼリヤ」だ。  

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この庶民の低価格イタリアンレストランは、マイケル・ポーターが言うところのコスト・リーダーシップ戦略を取り、2013年11月には国内1000店舗を達成、ファミレスでは「ガスト」(約1,300)に次ぐ規模となっている。

理系中心の経営陣・社員が科学的なレストラン運営を実践し、売上高利益率5%であれば優良といわれる外食業界において同10%を維持、圧倒的なコスト削減、高効率経営を開発したと賞賛されているが、ボクは、サイゼリヤが開発した真にイノベーティブなものは、まったく別のものだと仮説立てている。

 

それは、“中高生のレストラン”という新たなレストランカテゴリーだ。

 

先週末にもここを利用したのだが、ビビるのが中高生客の多さで「ここは学食なのだ。」と自然に錯覚さえしてしまうレベル。いつ行っても半数以上が中高生というアベレージがスゴい。

この“中高生のレストラン”という新たなカテゴリーであり特異なポジショニングについて思考を巡らせた時に、3つのポイントが浮かび上がったので整理してみる。

 

1:中高生のライフスタイルは、よく考えてみると、サラリーマン、OLのライフスタイルと何ら変わりがないという事実

中高生は、同僚(同級生)との交流、(部活、学内イベント)打ち上げ、コンパなど、飲み食いの利用機会が実は頻繁にある。

限られた財布の中身を駆使して機会を最大化するには、1回のコストを押さえるという戦略になり、よって“中高生のレストラン”は、サラリーマン、OLにとっての「飲み放題の低価格居酒屋」のイメージに近い。

 

2:ファーストフード、ファミレスに居心地の悪さを感じた中高生の新たなオアシス

ファーストフード、ファミレスにおける、低価格化競争が終焉した後の高級化・カフェ路線は、ビジネスマンやシニアなどの大人中心の落ち着いた空気を作り上げ、ワイガヤのにぎやかな雰囲気を消し去った。

中高生は、敏感にその空気を感じ取っているはずで、たとえ見た目が子どもであっても、キチンと接客され、ある程度ゆったりした席に通され、ドリンクバーを使ってダベっていてもアリなサイゼリヤは、もう他のどこにもないオアシスだろう。

 

3:スマホ、ソーシャル(LINE)を駆使する中高生間で、抜群に効くマインドシェア効果

大人と比べて圧倒的に狭い生活圏のなかで、スマホ、ソーシャルを駆使する彼らのコミュニケーションにおいて、特定のキーワードへのフリークエンシーが高くなり、抜群のマインドシェア効果が発揮されるのは、おそらく正しい仮説だ。

サイゼリヤというワードが、ことあるごとに誰かから発信され、履歴となり、記憶される。狭い生活圏であればなおさら、その誰かは、近しい間柄である可能性が高く、エモーショナルに記憶される。その出現頻度がある一定値を超えると、「ちょっとお腹すいたね」「どこかに集まろ」で想起される1stチョイスは必ず「サイゼリヤ」になるというストーリーだ。

 

以上

結局今回は、サイゼリヤを題材にして、中高生のライフスタイルについてイメージを膨らませるということをやったわけだが、大まかな部分では“大人と変わんねえじゃん”がざっくりとした結論。

人間の本質的な心理・欲求・行動についてはきちんとフレーム化しておこう!と改めて認識した。

 

ちなみに、業績不振のマクドナルドは、やはり中高生の離脱が顕著で、全国に勢力を伸ばしている喫茶店チェーン、コメダ珈琲は、中高生をきっちりと獲得しているとのこと。

 

狙うべきターゲットとして、絶対に語られることがない中高生だが、郊外の店舗ビジネスにとっては、意外や重要な存在なのかもしれない。

 

コンテンツのマネ(真似)タイズ

少々ダジャレなタイトルだが、今回のテーマは、収益の仕組みとしてのマネタイズではなく、コンテンツがウケるためには? 情報拡散するためには? を考えた場合、イマドキとっても重要なファクターは、真似しやすい、真似したくなる“マネ(真似)タイズ”だ、という仮説についてだ。

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有名な消費者の心理プロセスに、AIDMA(アイドマ)やAISAS(アイサス)というものがあるが、スマホを起点に、誰でもいつでもどこでも情報発信・表現できるインタラクティブなライフスタイルにある現代は、このプロセスに“真似る”が入る

さらに言えば、制作サイドは真似したく要素を意図的に入れるべきで、その真似要素をカスタマイズ、二次創作したくなるというレベルまで昇華させると、もっといい。

 

つまり…。

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ラーメン二郎のインフルエンサーはバイク乗り

中毒性の高い味と規格外のボリュームに、熱狂的な信者が多いラーメン店「ラーメン二郎」。

極めてジャンクなため「豚の餌」とネガティブに称されることもあるけれど、どうやらボクも少しだけ毒されているようで、たまに無性に食べたくなる。

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この年始も欲望のアラートが発生してしまい、1月5日、本年初日の営業日に、自宅近くの「湘南藤沢店」へ初詣したのだが、そこで「あれ?やっぱり」と気づいた。

ラーメン二郎の客に占めるバイク乗り割合が、あまりに多いのだ。いつ行っても。

 

そのなぜ?を仮説立てるために、まずは共通項を整理してみた。

 

1:パーソナルかつ神聖化してしまう嗜好品

バイクもラーメンも基本は一対一で楽しむパーソナルなもの。

さらには、うんちくを語りたくなる、その存在そのものを思想としてとらえてみたくなるなど、情報を深掘るにつれて神聖化していく嗜好品でもある。

 

2:身体的リスクと裏腹のスリル

ラーメン二郎のキツめのボリュームと塩気はどう考えても身体に悪いし、バイクにしても乗り物の中で最も無防備だといえる。

つまり、どちらも身体的リスクを前提に、そのスリルを楽しむものであるということだ。

 

3:巡礼‎文化

関東を中心に各地に散らばって存在するラーメン二郎だが、チェーン店ではなく、のれん分けのため、店によって味が異なる。そのため、各店を巡りたくなる衝動がおきやすく、事実ジロリアン(=二郎の熱狂的信者のこと)は巡礼行為をする。この巡礼という文化はバイクのツーリングと似通っている。

 

以上この3点をふまえて、調査をしてみたところ、

ラーメン二郎にはなぜバイク乗りが多いのか?という疑問に対して、

なるほど、と思える仮説というかストーリーに辿り着いた。

 

それは…。

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