1000の仮説と答え合わせ

日々の頭に浮かんだ疑問を、1000個を目標に「調べて」「仮説だてて」「できれば答え合わせしていく」

巷のディスラプト:ストライダーが破壊したプロセスとプロダクト

3~4歳の幼児たちが自転車を颯爽と乗り回す。
そこには、かつて幼児の自転車には必ず付けられていたはずの補助輪はない。ひと昔前には、ありえなかった光景が、日本のあちこちの公園で繰り広げられている。そして、この事実を子どもを持つ親以外はほとんど知らない。。。

 

ストライダー」というブランドに代表されるペダルとブレーキのない
ランニングバイクという新しいカテゴリーの自転車によるイノベーションインパクトだ。

自転車を乗りこなすまでのプロセスとして当たり前だった

「三輪車」→「補助輪付き自転車」→「自転車」の3ステップを

「ランニングバイク」→いきなり「自転車」にショートカットし

「三輪車」と「補助輪付き自転車」というカテゴリーを破壊した。


STRIDER JAPAN|ありがとう!ストライダー世界累計販売100万台突破!

うちには小学1年生の息子と年中の娘がいるが、2人とも2歳からストライダーに乗り、3歳になってすぐに補助輪なしの自転車を乗りこなすようになった。2人とも三輪車には乗っていない。ちなみにボクが補助輪なしの自転車に乗れたのは、たしか小学2年生のころで、周りの20代以上に聞いても、だれひとり3歳から乗れていたという人はいなかった。

ストライダーは、2007年にアメリカで発売され、現在は世界93ヶ国・地域で事業を展開。2015年2月に、世界累計販売台数が100万台を突破、そのうち約30万台は日本で売られている。3割近くが日本のマーケットで売られていることが興味深い。

DIYな米国の開発者と、コンテンツ化した日本の開拓者

一体、誰がこのイノベーティブなプロダクトを創りだし、誰がその価値を広めたのか。

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生みの親は、ライアン・マクファーランドという米国の片田舎のDIYパパ。
元々バイクのディーラーの両親の元で、バイクに親しんでいた彼は、長男が2歳になった2007年に補助輪付きの自転車を買い与えたが、息子はペダルもこげず、重すぎてまったく乗ることができなかった。そこで、市販の子供用自転車を自宅のガレージで改造して、徹底的に軽く息子が扱いようにした。商品化などまったく頭になく、ただただ息子のために試行錯誤してストライダーの原型をデザインしたそうだ。

原点は「そもそもペダルなんていらないんじゃないか?」という、
これまで誰もが疑うことがなかったアタリマエを大胆に覆すアイデア

さらにたったひとりのユーザーを喜ばせたい一心で、
すぐさまガレージでプロトタイプを作ってみるというDIY精神。

ストライダーの誕生には、イノベーティブなプロダクト誕生の伝説に
不可欠な2つの要素があったってわけだ。

 

では、つぎの謎。誰がその価値を広めたのか。
なぜこのストライダーは爆発的にヒットし、その1/3は日本のマーケットで売れているのか。

張本人は、ちょっと意外な人物で、映画キャラクターやアメコミキャラクターのフィギュア・グッズ専門店としてコアなマニアの間で有名な豆魚雷の社長、岡島和嗣さんなのだ!

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豆魚雷 ※2016年1月に創業20周年を迎えた。
https://www.mamegyorai.co.jp/net/default.aspx

岡島さんは、米国で見つけたストライダーを2歳の息子に買い与え、みるみる乗りこなすようになる姿に感動して、米ストライダースポーツインターナショナルへメールで直談判して正規代理店に。
知名度も販路もまったくない状態に悪戦苦闘しながらも、その価値をサイトで詳しく情報発信し続けた。

ブレイクスルーは、ストライダーをプロダクトではなくコンテンツに転換したマーケティング活動だった。
バイクやプラモデル好きなパパの趣味・趣向に着目し、米国本社に要請してハンドルやホイールなどの部品の色を増やしてもらい19万通りのカスタマイズができるようにした。
また、“世界最年少の二輪レース”として、2010年に2歳から出場できる「ストライダーカップ」を日本で初めて開催した。
この大会は以来年間4戦開催され、現在は世界各地でも開催される日本初世界規模のコンテンツとなっている。

このストライダーの成功物語は、いかにイノベーティブな価値を持つプロダクトであっても優れたマーケティング(粘り強いマーケティングともいえる)が不可欠だということを教えてくれる好例だ。ピーター・ティールが『ZERO to ONE』でマーケティングを無視するなと口すっぱく語っていたことも思い出す。

豆魚雷の岡島さんは、20年前にまだフィギュアというカルチャーがなかった時代に、日本にフィギュアカルチャーを根付かせた人物のひとりだったため、フィールドは違えど、新たなカルチャーを根付かせるための感が人一倍冴えたのかもしれない。

今後も巷のディスラプトの舞台裏をウォッチしていこう。

 

キッズ用ランニングバイク STRIDER(ストライダー)グリーン/ ST-J4

キッズ用ランニングバイク STRIDER(ストライダー)グリーン/ ST-J4