1000の仮説と答え合わせ

日々の頭に浮かんだ疑問を、1000個を目標に「調べて」「仮説だてて」「できれば答え合わせしていく」

ネットもソーシャルもなかった約20年前に、イマドキの生活者を正確に描いた驚愕の予言書

ネットもソーシャルもなかった今から約20年前に、現在の生活者の「価値観」「ライフスタイル」「“キブン”」を見事に言い当てていた予言の書があった。。。

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商品、サービス、メディアetc.なんらかのコミュニケーション戦略や戦術をプランニングする際に、ぜったいに避けては通れないし、最重要なのが、ターゲットである生活者をイメージし、そのインサイトを洞察するステップだ。

…なんだが。デジタルで生活者のあらゆるデータが容易に取得できるようになってからというもの、生活者の態度変容やアクションを促すためのありとあらゆるテクニカルな手法やTIPSが、毎日のようにマーケティング畑のコンサルタントやイマドキのグロースハッカーらから発信され続け(ゲップ。。。)、データというファクトベースで導出された手法だからね…という強い洗脳力に惹かれて、“手法先行あたま”でプランニングにじゃんじゃん活用しちゃっているマーケッターやプランナーはかなり多い。

ボク自身、耳障りとウケがいいことを理由にそんな手法やTIPSに関するワードを連呼してしまったりもするが、なんでその手法やTIPSが効果的なのかまでを完璧に説明できないし、心の底では、もっと本質的な人間の行動心理や価値観をベースに考えるべきだろ?という強い想いが滾っていた。

そんな想いを抱えながら、「あ! そういえば」と、ふと自宅の本棚にあった一冊を10年以上ぶりに読み返して、目が覚めた。開眼した。

ネットもソーシャルもなかった時代、1995年に書かれているにもかかわらず、現在の生活者の「価値観」「ライフスタイル」「“キブン”」を見事に言い当て、ノマド、コワーキング、クラウドソーシング、クラウドファウンディング、学びサービス、ゆるい趣味コミュニティ、キュレーションメディア、戦略PR、コンテンツマーケティングetc.、
今、社会に受け入れられている新しい仕組み・サービス・手法やライフスタイルのほとんどすべてを、なぜ誕生して、なぜ社会に広く受け入れられるのかまで説明できてしまう、まさしく予言の書だったのだ。

 

予言の書とは、オタキング岡田斗司夫氏の作家デビュー作『ぼくたちの洗脳社会』。

ぼくたちの洗脳社会 (朝日文庫)

未来学者 アルビン・トフラー『第三の波(The Third Wave.)』、堺屋太一『知価革命』を下敷きに、テクノロジーの進化ではなく、価値観の変化(パラダイムシフト)という視点から、“近未来は、こんな社会になりますよ。”と鮮明に描いた一冊だ。

『ぼくたちの洗脳社会』は、無料で公開されているため、ここでは要点だけを紹介する。ぜひ以下のURLより全文読んでみて欲しい。
http://otaking-ex.jp/special/book001_001.html

 

パラダイムシフト

▼これからの時代は、「モノ不足・情報余り」の時代

・物欲や金に惑わされるのをみっともないと感じる。モノに関心を示さないのを立派と感じる
・「たくさんあるモノをパーッと使う美意識」は「情報をたくさん使うこと」をカッコイイと感じさせることになります
・精神世界を大切にし、科学よりも抽象的芸術を愛する

 ▼誰もが洗脳者になれる社会「自由洗脳競争社会」

・「洗脳行為が自由になり、個人に開放されつつある社会」
・人々の不安や不満をつかみ、最も効率よくそれを解消する方法を提案することによって、
 多くの尊敬と賞賛を得られるのが、自由洗脳競争社会。得られる利益は経済利潤ではなく、洗脳利潤、つまりイメージである。これが「洗脳社会」「自由洗脳競争」の定義
自由経済社会においては、何を買うかが最大の関心事でした。これと同様、自由洗脳社会では、豊富にある価値観や世界観、
 つまりイメージから何を選ぶかというのが最大関心事になります
・未来企業を左右するのは「イメージキャピタル」

▼洗脳社会での消費行動

・消費行動は、どんどんサポーター的要素が強くなっていく

・つまり「モノを買う」「お金を払う」という行為が、自分の欲しいものを手に入れるためや、自分の望むサービスを受けるためではなく、自分が賛同する企業やグループ・個人を応援するためになされることが多くなる
・そういうサポーター的お金の使い方がカッコイイと考えられるようになり、逆に、自分のもの欲しさにお金を使ったり、どこをサポートしていいか分からなかったりすることはカッコワルイことになります。また、いくつもの団体をサポートしている、そのトータルコーディネートもバランスが取れていなければなりません。 

 

パラダイムシフト、重要な3つの視点

①情報余り

・情報化社会の本質とは、「世界中の小さな事件の客観情報まで入ってくるのではなく、大きな事件の解釈や感想が無限にあふれ出す社会」
「高度情報化社会とは、情報の数が増えるのではなく、一つの情報に対する解釈が無限に流通する社会である」
・つまり価値判断や世界観が、事実よりもずっとたくさん流通されていくようになる
・豊富な情報ネットで莫大な量の価値観・世界観が流通する世界 

②唯一無二の自分

・「自分の気持ちが一番大事、という価値観」
・自分の感覚・趣味性を最大の価値とする
・価値観を共有する者同士がグループを形成する
・個人の中で複数の価値観をコーディネートする
・科学的・合理的解決法に何も期待しないからこそ、心情的な解決法を採る 

 ③一生、お勉強

・「唯一無二の自分」と「一生、お勉強」が合体して、アマチュア活動やカルチャースクール活動はどんどん盛んになるでしょう
・彼らは「おもしろそう」「楽しそう」という自分の気持ちを大切に、勉強する分野を選びます
・彼らの目的は「自分を豊かにする」ことです
・彼らは自分の気持ちを大切にするために作ったり売ったりします。つまり、自分の好きという気持ちを再確認するために描いたり作ったりし、
 その気持ちに同調してくれる人の存在を確認するために売るのです。お金を儲けるためでも、有名になるためでもありません
 こういったアマチュア活動は今後ますます盛んになるでしょう

どうっすか? 

『ぼくたちの洗脳社会』の内容は、生活者のインサイトを洞察するうえでの重要な土台(ベース)になるし、調査段階で実施するソーシャルリスニングやグループインタビュー/デプスインタビューにおける有効な仮説にもなるはずだ。
似たような生活者の本質論文脈では、最近こんな書籍も発刊されて、話題になっている。

メディア野郎・田端信太郎氏と“Mr.戦略PR”本田哲也氏の共著『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』

広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。

脱・手法ファーストの時だ。