「吉田類の酒場放浪記」が名物番組になり得た理由
祝10周年!吉田類の酒場放浪記スペシャル~10年の奇跡をふりかえろう~その1 ...
「吉田類の酒場放浪記」というBSの名物番組がある。
BS-TBSで2003年6月から放送を開始し、昨年で10周年。
毎週月曜の21:00-22:00に観ることができるが、ボクはいつも年末に実家に帰った時に、両親とダラダラ鑑賞するのが定番になっている。
そもそも観だしたきっかけは、親父とおふくろが大のファンで、
2人に猛烈に推薦されたから、というものだ。
簡単に番組を紹介すると、
酒場ライターの吉田類という、いつもハンチングの中年男性が、
毎回一件の居酒屋を訪ねて、飲んで食べて酔っぱらう。
しばしば店の常連に絡み、強引につまみ食いしたりもする。
エンディングは店の外に出た吉田類が感想をひとこと。
立ち去る後ろ姿をバックに、
彼の読んだ一句が映し出されて締めくくられる。
とまあ、ゆる〜い番組なのだが、
視聴者は小学生から企業のお偉いさんまで、
吉田類はプロ野球の始球式にまで登場、
吉田類と一緒に呑みまくる、過去8回開催されているイベント「吉田類のお台場昼呑み」は、チケットが完売するほどと、カルト番組の域を超えた“どメジャー”な番組なのだ。
さて、ではなぜ「吉田類の酒場放浪記」名物番組になり得たのか?
答えは3つだと仮説する。
1:ゆるキャラ=吉田類の私的なアプローチ
番組では酒場ライターと称される吉田類は、シュールアートの画家として主にパリを拠点に活動後、イラストレーターに転身。
1990年代からは酒場や旅に関する執筆活動を始めるかたわら、俳句愛好会「舟」を主宰とあり、異能な男なようだが、番組での彼は、酒好きの陽気なおっさんであり、ゆるキャラだ。
そんなふつうのおっさんが極めて私的で素朴なコメントをする。
酒や肴へについての講釈をたれることは一切しないし、気の利いたコメントをすることもほとんどない。
「うまいですね〜」「いいですね〜」と、グルメリポーターではNGな感想だらけ。ヨイショやうんちくの情報量で演出するグルメタレントと明らかに一線を画している。
2:グルメ番組では紹介されないふつうの居酒屋に行く
この番組のターゲットは、東京下町の個人店主の居酒屋が中心。
際立った新規性や独自性が見当たらない店も多く、選定の基準はその街で長く愛されていて、常連でにぎわっているという程度か。
新上陸やら新コンセプト、老舗やミシュランの星付き店ばかりをグルメ番組がターゲットにするなか、このふつうさは際だつ。誰でも気軽に行ける店であり、いわゆる自分ゴト化しやすいってやつだ。
※一見さんが入りにくい雰囲気もあるけど
この手のセレクトは、「とんねるずのきたなシュラン」や「孤独のグルメ」に通じる。
3:新作+旧作2本という中毒性の高いフォーマット
実はこの3つめのが、ここまで人気が伝播した理由だと考える。
この+旧作というのがミソで、定食やコンピレーションアルバムのように、なんとも不思議なお得感と安心感があるのだ。
さらに、「見逃しても、また見れるや」という気軽さも与えてくれるし、1本15分というのも、長時間バラエティが全盛の中、心地良く、高い中毒作用を生み出している。
以上、理由を並べてみたが、この番組の人気の本質を問われたら、
ボクは、「レイドバック感」と答える。
レイドバックとはロック用語で、くつろいだ、のんびりとした、ゆったりしたという意味。
「吉田類の酒場放浪記」=レイドバック
レイドバック感のある番組という意味では、まったく毛色が違うが、
今ブレイクしている「テラスハウス」も同様だ。